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国際会議ランキング2024発表、アジア・中東が台頭。質重視が鮮明に

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国際会議・コンベンション分野における主要団体であるICCA(国際会議協会)は、2024年版の「Country & City Rankings(国・都市別ランキング)」レポートを発表した。

同レポートは、ICCA加盟会員からの報告と独自調査をもとに、世界各地で開催されたICCA基準を満たす国際会議1万1099件を集計したもの。2024年版のレポートでは、地域の専門性や持続可能性、社会的インパクトといった質的要素にも注目が集まっていることが明らかとなった。特に中規模都市や新興市場の存在感が高まり、会議開催地としての多様化が進んでいるのが特徴だ。

 

国際会議は回復へ、中東・中南米の存在感増す

会議数は前年より増加し、コロナ禍からの回復基調が継続。欧州が依然として最大の開催地域(全体の56%)を占め、次いでアジア太平洋(18%)、北米(10%)が続く。ラテンアメリカ(8%)と中東(2%)は、2022年から3年連続で開催件数が前年比増を記録した唯一の地域であり、国際会議の新たな成長市場として存在感を高めている。

また、アフリカ地域では政府主導による会議インフラ整備や誘致能力の強化が進んでおり、今後数年で加速度的な成長が見込まれる。いずれの地域も、これまで欧州中心だった国際会議に変化をもたらしつつあり、グローバルな会議開催地の多極化を象徴する動きといえる。

 

国別1位はアメリカ、日本は件数増で7位を維持

2024年の国別ランキングでは、アメリカ(709件)が3年連続通算23回目の1位を獲得した。2位のイタリア以下トップ10の顔ぶれも前年と変わらず、ドイツ、イギリス、フランスで順位の変動があったのみだった。

日本(428件)は7位を維持し、アジア太平洋地域から唯一トップ10に入った。開催件数も前年より65件増加した。また、トップ50には日本に加え、中国(11位)、韓国(12位)、オーストラリア(17位)、タイ(25位)、シンガポール(27位)、インド(28位)、台湾(29位)、マレーシア(31位)などアジア太平洋地域の13カ国がランクインし、ヨーロッパに次ぐ競争力を示した。

国際会議開催国トップ10の表

 

都市別はウィーンが首位奪還、東京は16位で最多件数

都市別では、オーストリアのウィーン(154件)が前年4位から、2年ぶりにトップに返り咲いた。わずか1件差でリスボン(153件)が2位、3位以下はシンガポール(144件)、バルセロナ(142件)、プラハ(131件)と続く。前年1位のパリが6位に後退したのは、五輪開催の影響が考えられる。東京(97件)は16位で、前年13位から後退したが、開催件数は前年より6件多く、日本国内では最多を維持した。

また、トップ200位内には日本から複数の都市がランクインしており、国別ランキング7位に貢献していることがわかる。

アジア太平洋では、シンガポール、東京に加え、ソウル(124件・6位)、バンコク(115件・8位)、香港(86件・20位)がトップ20に入った。

国際会議開催都市ランキング

 

会議の質・集客力が新指標、ドバイが平均参加者で首位

今回新たに発表された「1会議あたりの平均参加者数」のランキングでは、ドバイ(899人)が圧倒的な1位で、次いでバルセロナ、ミラノ、バリ、メルボルンなどが上位に並んだ。単なる件数では測れない「集客力」や「会議規模」を示す指標として、今後都市の国際競争力を測る上で重要性が増すと考えられる。

国際会議開催都市・参加者数トップ10

 

医療・テクノロジー分野が主流、1000人以下の中規模会議が主流に

分野別では、医療(17%)・テクノロジー(14%)・科学(13%)が開催件数で上位を占めており、これに産業と教育を加えた5つは、過去10年以上にわたり不動の人気分野として継続的な需要を維持している。

また、開催規模では中規模会議(150〜999人)が全体の53%を占めており、主流となっている。中規模会議は参加者のエンゲージメントが高く、経済効率とのバランスも良いため、開催地の戦略との親和性が高いとされる。なお、小規模会議(50〜149人)は39%、大規模会議(1000人以上)は8%だった。

 

国際会議の経済効果1.7兆円、1件あたり価値も上昇

国際会議が生み出す直接的な経済効果は、2024年で約116億ドル(約1兆7000億円)に達し、観光産業における高い経済的貢献を示している。

1件の国際会議には、平均で約409人の参加者が集まり、1人あたりの登録費は平均564ドル(約8万1000円)にのぼる。これを踏まえると、1件の会議が生み出す経済的インパクトは非常に大きく、会議そのものの価値が年々高まっていることがうかがえる。

 

国際会議は持続可能性・地域貢献へ、『未来型モデル』に注目

ICCAは、今後の国際会議においては、持続可能性や地域社会への貢献、知識との整合性(ナレッジ・アライメント)が一層重要になると指摘する。国際会議の開催地は従来の大都市圏に限らず、地方都市や新興市場にも広がりを見せている。こうした価値観の変化に対応し、ICCAは都市・学術機関・産業界の連携を軸とした「未来の会議」モデルの構築を提唱した。

その先行事例として、ウィーンで開催された「欧州呼吸器学会(ERS)」が紹介されている。同市では、会議にあわせて一般市民向けの啓発イベントや学校訪問を実施し、地域社会への波及効果を創出。会議の社会的レガシーを重視する動きが、今後他都市にも広がるとみられる。

(出典:ICCA, Country & City Rankings 2024

 

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